横浜市の空き家活用制度・補助金 完全ガイド(2025年版)
空き家を「負動産」から「地域貢献資産」へ──横浜市の最新制度をやさしく解説
一方で横浜市には、空き家を地域のために活かす補助金・支援制度が多数あります。本ガイドでは、横浜市の最新の空き家活用制度(2025年版)を徹底解説します。
はじめに:横浜市の空き家の今と“放置のリスク”

横浜市の空き家が抱える現状
横浜市では、人口減少・高齢化の進行に伴い、空き家は増加傾向にあります。2018年の「住宅・土地統計調査」によると、市内の空き家・空き室は178,300戸、うち賃貸用住宅は113,400戸。人口は2019年をピークに減少に転じ、借り手の減少により、今後も空き家・空き室の増加が見込まれます。戸建に住む高齢者のみ世帯も増えており(平成30年度181,400戸・全戸建の30.2%)、将来の空き家予備軍といえます。
「とりあえず放置」が招く主な4リスク
相続などで取得した空き家を「とりあえずそのまま」にすることは、今、経済的・法的に大きなリスクを伴います。
固定資産税が最大6倍に跳ね上がる
これまで住宅が建っている土地は「住宅用地特例」により固定資産税が最大1/6に軽減されていましたが、適切な管理が行われていないと判断された「管理不全空家等」に指定され、市町村長から勧告を受けると、この特例が解除されます。その結果、固定資産税の請求額が最大6倍になる可能性があります。「特定空家等」指定と行政措置
管理不全空家等が改善されず、倒壊の危険、衛生上有害、景観を著しく損なうなどの状態になった場合、「特定空家等」に指定されます。特定空家等に対する勧告も住宅用地特例の除外につながります。さらに勧告や命令を無視し続けると、市町村長による行政代執行(強制解体)が行われ、その費用はすべて所有者が負担することになります。賠償責任や犯罪誘発のリスク
老朽化が進んだ空き家は、台風や地震で倒壊したり、屋根や外壁が落下・飛散したりする危険性があります。これにより周囲に損害を与えた場合、所有者が損害賠償責任を負う可能性があります。また、空き家は放火や不法侵入、ゴミの不法投棄といったトラブルの温床にもなりがちです。資産価値の下落と売却チャンスの喪失
空き家を放置すると、建物の劣化が進み、売却の際の資産価値が低下し続けます。また、相続空き家を売却する際に利用できる「3,000万円特別控除」などの税制上の特例は、譲渡期限が定められているため、放置している間に適用条件を逃す危険があります。
参照元:国土交通省 空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報
参照元:政府広報オンライン 空き家の活用や適切な管理などに向けた対策が強化。トラブルになる前に対応を!
空き家オーナー向け支援の全体像

空家化の予防
空家等の流通・活用促進
管理不足空家等の防止・解消
横浜市はこの3つを柱として、空き家対策を総合的かつ計画的に推進しています。空き家を手放す(売却・解体)か、残す・活用する(賃貸・地域貢献)かに応じて、様々な支援制度が設けられています。
| 目的 | 主な活用方法 | 関連する横浜市の支援制度 |
|---|---|---|
| 流通・活用 | 賃貸/地域貢献施設への転用 | 空家の改修等補助金(地域貢献型/簡易改修型) セーフティネット住宅制度(家賃補助・改修費補助) 空家活用のマッチング制度/専門相談員派遣 |
| 解体・売却 | 更地化・建替/売却・公共活用 | 住宅除却補助制度/建築物不燃化推進事業補助(エリア限定解体・建替え) 空き家の譲渡所得3,000万円特別控除 |
| 予防・管理 | 適切な管理・見回り | 空家管理代行事業者リストの紹介/専門家団体との連携による相談体制 |
参照元:横浜市 空家を残したい・誰かに使ってもらいたい方へ(地域活用に利用できる補助制度の紹介など)
参照元:横浜市 空家を手放したい方へ(解体・売却に利用できる補助制度の紹介など)
改修補助:地域貢献型/簡易改修型の比較

横浜市では、空き家を地域に開かれた施設として活用する所有者や団体に対し、改修費用の補助を行っています。 これらの補助金は「地域活性化に貢献する施設(子育て支援施設、高齢者支援施設、コワーキングスペース等)」の設置促進を目的としています。
| 区分 | 地域貢献型 | 地域貢献[簡易改修]型 |
|---|---|---|
| 目的 | 地域貢献施設の設置促進 | 簡易改修により活用を加速 |
| 対象者 | 自治会町内会・NPO等の地域活動団体、事業者 | |
| 補助対象工事 | 内外装等の改修工事費、耐震改修工事費 | 内外装等の改修工事費、耐震シェルター設置工事費、外構工事費、DIYによる改修の際の建築材料費 等 |
| 金額上限 | 制度案内を確認の上、要件等により変動。 | |
| 受付方法 | 先着順で受付。当該年度予算額に達した時点で終了。 | |
| 注意点 | 地域貢献事業として要件を満たすことが必須であり、横浜市においても関係部署と協議の上、事業が地域活性化に資するかどうかが判断されます。計画段階で早めに相談することが推奨されます。 | |
※株式会社YOROZUYAは2025年10月に「地域貢献[簡易改修]型」の交付決定実績あり。
参照元:横浜市 空家を残したい・誰かに使ってもらいたい方へ(地域活用に利用できる補助制度の紹介など)
セーフティネット住宅(家賃補助)のしくみ(オーナー手続き中心)

制度の構成
- 登録制度(セーフティネット住宅)
- 補助制度(家賃減額・保証料 等)
- マッチング・入居支援
空き家を住宅確保要配慮者(高齢者、障害者、子育て世帯、外国人、低額所得者など)に提供する場合、住宅セーフティネット制度を利用できます。住宅セーフティネット制度は、「登録制度」「補助制度」「マッチング・入居支援」の3つの仕組みから成り立っています。
主な登録基準
オーナーは、住宅確保要配慮者の入居を拒まない住宅を「セーフティネット住宅(SN住宅)」として横浜市に登録できます(空き室1戸から可能)。
- 床面積が原則25㎡以上(2006年3月31日以前に建築確認された住宅は18㎡以上)。
- 新耐震基準相当の耐震性を有すること(1981年6月1日以降に建築確認がなされた住宅が適用基準)。
- 敷金は家賃の3か月分以下、礼金・更新料は家賃の1か月分以下であること。
オーナー向け家賃補助の仕組みと手続き
SN住宅として登録された住宅のうち、一定の要件を満たすものに対して、横浜市は経済的支援を行っています。これは賃貸人の家賃収入を直接補助する制度です。
| 補助内容 | 対象 | 補助額の目安 | 期間 |
|---|---|---|---|
| 家賃減額補助 | 賃貸人(オーナー) | 契約家賃と入居者負担額の差額を補助(最大8万円/月 ※子育て世代は最大4万円/月) | 最大20年(子育て世帯は最大6年 間) |
| 家賃債務保証料 等 | 保証会社 等 | 初回保証料について全額補助(上限6万円/年) | 初回保険料のみ |
オーナー手続きのポイント
- 登録専用ウェブサイト「セーフティネット住宅情報提供システム」から電子申請を行います(登録料は無料)。
- 補助金申請家賃減額補助は、賃貸人または援助実施者が行います。
- 支払い補助金は基本的に四半期ごとに後からまとめて支払われます。
- 継続交付翌年度も継続して補助を受ける場合、2月10日(土日祝の場合は直前の開庁日)までに継続交付申請を行う必要があります。
マッチング制度(“空家バンク非設置”の注意)

空き家を「地域のために使ってほしい」「活用したい団体を探している」というオーナー向けに、横浜市は特定の橋渡し支援を行っています。
空家活用のマッチング制度の概要
横浜市では、市内の空家等の所有者と、地域活動の拠点を探している団体や事業者との橋渡しをし、対話の場を設定する「空家活用のマッチング制度」を提供しています。利用方法が決まっていない空家・空地をお持ちのオーナーは、相談が可能です。「空家バンク」ではない点に注意
一般的に他の自治体でよく見られる、不動産売買や賃貸を目的とした「空き家バンク」とは異なり、横浜市の制度は地域活動での活用を目的とする団体や事業者との連携に重点を置いたマッチング支援です。不動産売却や賃貸を希望する場合は、宅地建物取引業協会などの専門家団体への相談が案内されています。参照元:横浜市 空家を残したい・誰かに使ってもらいたい方へ(地域活用に利用できる補助制度の紹介など)
解体・建替え補助(該当エリアの見つけ方)

空き家を解体して売却(更地化)したい、あるいは建替えたい場合に利用できる横浜市の補助制度は、建物の耐震性や立地エリアによって異なります。
1) 住宅除却補助制度(全域・旧耐震向け)
耐震性が不足する木造住宅等の解体工事費用を市が補助する制度です。
対象建築物
平成12年5月末日以前に新築の工事に着手した建築物で、耐震性が低い(倒壊の危険性がある)と判断されたもの。特定空家と認定された建築物も対象となります。補助上限額(令和7年度より拡充)
旧耐震建築物(昭和56年5月末以前)
50万円。新耐震グレーゾーン住宅(昭和56年6月〜平成12年5月末以前)
一般世帯20万円、非課税世帯40万円。
対象区域
不燃化推進地域に該当しない区域。2) 建築物不燃化推進事業補助(エリア限定)
地震火災対策における重点対策地域内の老朽建築物等の解体や、燃えにくい建築物への建替え(新築)に対し、工事費用の一部を補助する制度です。
-
補助上限額
解体工事費で最大150万円が補助されます(新築工事費用の一部も補助対象となる可能性あり)。 該当エリアの見つけ方
重点対策地域(不燃化推進地域)は、鶴見区、神奈川区、西区、中区、南区、磯子区、金沢区の各一部です。具体的な地区は、補助対象地区一覧表、または令和7年1月開始のi-マッピー(行政地図情報提供システム)で確認できます。ただし、境界が不正確な可能性があるため、境界に近い土地の場合は、都市整備局防災まちづくり推進課(045-671-3595)への問い合わせが必要です。
参照元:横浜市 空家を手放したい方へ(解体・売却に利用できる補助制度の紹介など)
参照元:横浜市 建築物不燃化推進事業補助<エリア限定の解体・新築の補助金>
ケーススタディ(株式会社YOROZUYAの採択事例)

YOROZUYAは、空き家を活用したシェアハウス事業を通して、シングルマザー・単身女性への安心できる住まいの提供と、地域社会の課題解決に取り組んでいます。
YOROZUYAの主な実績
横浜市補助金採択事例
2025年10月に横浜市より「空家の改修等補助金(地域貢献[簡易改修]型)」の交付決定を受けました。セーフティネット住宅活用
空き家をリノベーションしセーフティネット専用住宅として登録しました。この制度を活用することで、通常6万円の家賃を2万円で提供するなど、経済的な不安を軽減しています。行政連携
横浜市空き家マッチング制度の活用実績があり、2024年には国土交通省の「人生100年を支える住まい環境整備モデル事業」にも選定されるなど、その実績が行政にも認められています。申請の流れと必要書類チェックリスト

| 制度 | 必須となる主な事前準備/提出書類 |
|---|---|
| 住宅除却補助制度 | 補助申請前の耐震性のチェック(耐震診断または自分で行う調査)、見積金額が100万円以上の場合は2者以上の見積書。 |
| セーフティネット住宅(家賃補助) | 国ホームページ「セーフティネット住宅 情報提供システム」からの電子申請(登録)。翌年度の継続交付申請は期限(2/10)厳守。 |
| 空き家改修等補助金 | 地域活性化に資する事業計画の策定、事前に要件等のご確認のためのチェックシート作成。 |
| 相続空き家3,000万円特別控除 | 確定申告時に、売買契約書の写し、登記事項証明書、耐震基準適合証明書または取壊し証明書など。 |
参照元:国税庁 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
相談窓口・公式リンク集

| 相談内容 | 窓口・担当部署 | 連絡先 |
|---|---|---|
| 空家に関する総合案内 | 横浜市 建築局 住宅部 住宅政策課 横浜市の空家家等対策について | 045-671-4121 |
| セーフティネット住宅/家賃補助 | 横浜市住宅供給公社 住まいの相談センター 住まいるイン(補助金事務局) 空き室で困っていませんか? | 045-451-7762(平日10:00〜17:00) |
| 住宅除却補助制度 | 建築局 建築防災課 耐震事業担当 住宅除却補助制度 | 045-671-2943 |
| 建築物不燃化推進事業補助 | 都市整備局 防災まちづくり推進課 建築物不燃化推進事業補助<エリア限定の解体・新築の補助金> | 045-671-3595 |
| 売買・賃貸の専門相談 | 公益社団法人 神奈川県宅地建物取引業協会 他 空家を手放したい方へ(解体・売却に利用できる補助制度の紹介など) | 各団体の公式ページ参照 |
| 相続・登記・成年後見 | 神奈川県司法書士会 他 第3期 横浜市空家等対策計画 | 各団体の公式ページ参照 |
| 家賃債務保証制度 | 横浜市居住支援協議会 相談窓口 空き室で困っていませんか? | 045-451-7812(平日10:00〜17:00) |
| 税(譲渡所得) | 国税局電話相談センター等 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例 | 税についての相談窓口を参照。 |
YOROZUYAのご紹介
